院長のブログ

首が曲がったまま戻らない

60代 女性
今年の4月ごろから頭が90度近い角度で前に曲がったままになってしまったということです。
顔を起こし正面を向いた状態にすると首の後ろに痛みが出てしまいその姿勢を維持できない。
常に地面を見つめ上目づかいで前方を確認して歩く状態。
首の痛みに加え肩甲骨周辺、背中、腰部にも痛み。
朝起きるときには首から背中にかけて固まったようになり動かすと強い痛み。
神経学的検査の結果、両目で下を見る運動を繰り返すことで首の筋肉のバランスが取れ顔を正面に向いた状態を維持しても首の後ろの痛みはなくなり背部痛、腰部痛も解消されました。

《ここからは少し専門的に説明したいと思います》 
頭部の動きに合わせ眼球運動を行う前庭動眼反射というものがあります。
前庭動眼反射は頭や体が動いても視線は一点を見つめ続けられるという神経的反射です。
一点を見つめた状態で、顔が右側を向くと視線は左を向き、顔が左を向くと視線は右を向きます。
顔が上を向くと視線は下を向き、顔が下を向くと視線は上を向きます。

この患者さんは飲食店を経営していて料理を作りながらお客さんが来ると姿勢はそのままに眼だけでお客さんを確認していました。
この状態が長期間続いたことで上方への眼球運動により前半規管の亢進、後半規管の低下状態を招きました。
前半規管が亢進すると種々の身体的反射が起こりますが
この患者さんの場合、視線を上方に向け続けたことで、顔を下に向ける胸鎖乳突筋、斜角筋群が収縮する反射が持続して起こり続けたことでの頸部の屈曲位を招いてしまいました。

重要な問題は前半規管の亢進によって後半規管が低下を起こしたのか
後半規管の低下によって前半規管が亢進したのかということです。

小脳、前庭神経核、動眼神経核、滑車神経核、外転神経核、筋紡錘、関節位置覚など前庭動眼反射に関係する受容器、神経核を丹念に検査した結果、下方への眼球運動と段階的な視線を固定しての首の伸展運動からの刺激が最適と判断。

来院していただいた時には左右の小脳と大脳皮質の左右性バランスを整える刺激を入力。
在宅時には頭部を固定し下方への眼球運動、そして視線を固定した頭部伸展運動を行っていただきました。

このときに注意しなければならないのは頸部、背部、腰部の筋肉にマッサージのような刺激を行うのは禁物です。
原因は前庭動眼反射の異常で起きたのであり筋肉の収縮(一般的にはコリと言われている)は二次的要因です。
二次的要因である筋収縮に強い刺激をしてしまっては筋肉はさらに強い収縮を起こしてしまいます。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。