神経学的アプローチは現状の神経系の状態を詳細に把握するために種々の検査を行う必要があります。大きく分けて3項目あります

  1. 運動機能検査
  2. 感覚機能検査
  3. 神経機能検査

1) 運動機能検査

《筋力検査》2種類の筋力の検査方法で患者様の状態を把握します

① 筋肉自体の力や動き

力が正常に入っているか。本来の筋肉の動き(伸びたり縮んだり)は正常に行われているか。大脳の運動野からの指令の状態を診ます。脳梗塞や脳溢血などの血管障害が発生すると『運動麻痺』が起きます。これは運動野からの神経の指令が届かなくなり手足が動かなくなります。
ほかにも筋肉への血流が低下することで筋力低下が起こります。

② 筋肉の健全な張り(これをトーンもしくはトーヌスと言います)

筋のトーンを調整しているのは大脳皮質や脳幹からの下行性調整作用です。 身体の筋のトーンの左右差を診ることで脳の中枢機能を知ることができます。
ちなみに中枢からの調整機能が低下し筋のトーンが亢進した状態が『肩こり』であり異常亢進状態が首の筋肉におこれば『寝違え』、腰部の筋肉におこると『ギックリ腰』です。

※筋力のトーンを検査することにより中枢神経の状態を観察することができます。

2) 感覚機能検査

《表在感覚》表在感覚は身体の表面、皮膚の感覚です
痛覚

シビレ症状には重要な検査です。しかし抹消神経や中枢神経の機能状態によっては痛覚が鈍くなっていたり過敏になっていたりします。神経の状態に影響をうけやすい感覚です。

触圧覚

触った、押したなどの感覚は後索路という経路をたどって脳幹の延髄から大脳まで伝えられます。
これらの経路に機能低下や血流低下が生じると身体の触圧覚に左右差が生じます。

《固有感覚》固有感覚は身体の内部での感覚です。
固有感覚

筋肉の状態や骨などの振動、関節の位置、二点識別覚などの感覚は脳幹で神経を乗り換え反対側の大脳に届けられます。
この感覚はを検査することで脳幹の延髄と大脳皮質の機能を診ることができます。

3) 神経機能検査

末梢神経、脊髄、脳幹、間脳、大脳皮質の機能が身体の状態に影響を与えます。
神経機能検査で各神経系の状態を診ることで症状を改善するために最善最適で最も安全な刺激と方法が選択できます。

静止運動検査

大脳基底核が機能異常を起こすと静止振戦という小刻みな震えが生じます。
これは神経系が非常に危険な状態にある表れです。
静止振戦が現れている時には強い刺激(揉む、押す、筋肉への操作)は症状を悪化させるだけではなく神経系を傷つけてしまう可能性があります。

血中酸素濃度

パルスオキシメーターを使い血中に含まれる酸素濃度を検知します。
毛細血管は自律神経の影響を受けやすく交感神経が亢進すると毛細血管は収縮し血中酸素濃度が低下します。
自律神経は身体の右側と左側を個別に支配しています。血中酸素濃度が低い側の半身が交感神経過緊張の状態です。

視野検査

視野の広さは視覚野の機能によって変わります。
視野を検査することで脳の機能を検査できます。

ウェーバーテスト/リンネテスト

音叉を使い聴覚の状態を検査し側頭葉の機能を診ます。

眼底反射

眼に光を当て反射した光の位置で眼球の位置を測定。
動眼神経、滑車神経、外転神経の各脳神経とそれらをコントロールする脳幹や皮質の機能を観察します。

複視検査

眼底反射により問題があった場合、さらに詳しく眼球の運動機能を検査します。

眼球運動

眼球の動きは脳の多領域の複雑な機能により実現しています。

肢体位置

指や肘、膝、肩などの各関節はその位置を脳にリアルタイムで情報を伝えています。
関節位置覚が狂うと筋肉は正常に働くことができなくなり関節付近に痛みを発生する場合があります。

小脳機能

小脳が機能低下を起こすことで中枢への刺激が低下し、めまいやふらつき、言語障害、運動機能障害などありとあらゆる症状が現れます。

前庭機能

眼球運動や平衡感覚、また副交感神経と密接に関係しているためめまいや吐き気、乗り物酔いなどを引き起す原因となります。

角膜反射

眼の角膜を刺激すると目を閉じる反射です。
脳神経の三叉神経と顔面神経を同時に検査でき、脳幹の橋の状態を観察します。

筋の伸張反射

膝の下をたたくと膝がピーンと伸びる検査です。
これは筋肉の中にある筋紡錘というセンサーの状態を検査するものですが、筋紡錘は脳幹方の調整指令を受けて正常に機能しています。
筋肉の状態と中枢神経の状態を同時に観察できる検査です。

自律神経検査

輻輳

寄り目のことを輻輳と言います。
輻輳は中脳の副交感神経機能により調整されています。

対光反射

眼に光を当てると瞳孔が収縮します(縮瞳と言います)。交感神経が亢進していると縮瞳が低下します。
今までまぶしくなかった太陽の光や照明がまぶしく感じるときは自律神経の働きが問題を起こしています。


上記の検査のほかにも種々の検査があり、それらを組み合わせ自律神経や神経系の状態を調べ最適で安全な施術を行います。