アジャストメントであれば筋紡錘、腱紡錘からのⅠa、Ⅰb、Ⅱの刺激が同側の小脳へ投射され対側の視床そして大脳皮質へと達します。
皮膚からの触圧覚であれば後索を延髄まで上行し薄束核もしくは楔状束核でシナプスし対側の視床へ行き大脳皮質へ投射されます。
音の刺激は対側の内側膝状体から大脳皮質へ、光刺激は対側外側膝状体から大脳皮質へ達します。
施術での行為はこれらの刺激の経路を必ず通ります。
と言う事はある症状を抱えた患者さんに対してどの刺激を使うかということが重要になりますが、もっと重要なのはその神経経路の状態が最重要になってきます。
例えば小脳が機能的に問題があり刺激をすると症状を悪化させてしまう可能性がある時アジャストメント(いわゆる背骨・関節をボキッとさせる刺激)は避けたい。
しかし検査などの状況から小脳への刺激をしなければならない。
さあどうしたらいいでしょう。
20代の女性
真っ直ぐ歩けない、めまいがする。
最近右手に持った物をよく落とすようになった。
呂律が回らずうまくしゃべることができない(酔っぱらった時のしゃべり方)
などの症状で来院しました。
問診で小脳に問題があることはすぐにわかりました。
検査を行うとやはり右小脳の機能低下が顕著に表れています。
しかし問題があります。
右小脳の機能低下が著しく直接的な刺激を受け入れられる状況にありません。
しかし右小脳を賦活しなければ症状は改善しません。
アジャストメントなどの小脳へ直接入力される刺激は使えません。
小脳を直接ではなく間接的に刺激する方法・・・
皮質-橋-小脳路と言う神経経路があります。
これは皮質を刺激の起点として小脳へ入力する方法です。
皮質-橋-小脳路はいわゆるイメージトレーニングを可能にしている神経的機序です。
患者さんには頭の中で右手を使って文字を書く、物をとるなどの運動をイメージしてもらいます。
この時には身体は絶対に動かさないで目をつぶってイメージしてもらいます。
これにより実際に運動を行ったのと同じ効果が得られかつ標的である右小脳をやさしく刺激でき無理なく賦活する事が可能です。
患者さんには朝、昼、晩と三回このイメージエクササイズを行っていただいた結果3日目でまっすぐ歩けるようになり、一週間で症状の50%が改善、3週間で症状のほとんどが消失しました。
神経の状態によって使用できる刺激と使用できない刺激があります。
その時の神経状態で賦活させたい神経系へどのような経路で投射するのかまた出来るのか、しっかりとした観察が重要になってきます。
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