鉄は必須ミネラルとして「日本人の食事摂取基準」が定められています。
「日本人の食事摂取基準」2015年版での鉄必要量は成人男性で6~7mg、成人女性で9~10mg 閉経後の女性は5.5~6mgとされています。
しかし、1日に汗や尿として体外に排泄される量はわずか1mgです。
ということは、1日に排泄される鉄分量1mgを補えばよいことになりますので、必要量は1日に1mgとなります。
実際には摂取した鉄の10~20%しか体内に吸収されないので、1日に必要な鉄の6倍から10倍で決められています。
鉄の体内分布量 成人男性 4050mg 成人女性2750 mg
赤血球のヘモグロビン 2700mg (約67%) 2000mg (約73%)
肝臓 脾臓 骨髄内の
貯蔵鉄であるフェリチン 1000mg (約25%) 450mg(約16%)
組織の機能タンパク 350mg(約8%) 300mg (約11%)
血清トランスフェリン 3mg 3mg
血清フェリチン 0.3mg 0.1mg
医学書院 標準生理学 第5版より
百分率の計算をしてみたところ、面白いことがわかりますね。
女性の場合70%以上がヘモグロビンとして存在している、すなわちこれが減れば酸素を運ぶ機能が下がり、貧血を起こしやすくなるということです。
これを防ぐ機能として貯蔵鉄であるフェリチンがあるが、こちらは男性に比べて女性は9%も低い。貧血を防ぐために鉄を放出することができるが貯蔵量男性に比べてかなり少ないですね。
体が男性より小さいにも関わらず摂取基準は6mgと変わらないのはこれが理由なのではと思われます。
また、月経がある女性の場合、月経で失われる鉄の量は15~50mg/1回です、必要量からみても、かなり大量に失われていることがわかると思います。
このことから、鉄不足で最も深刻なのは、貧血です。
貧血とはすなわち酸欠です。
貧血は、血液の赤血球に含まれるヘモグロビンが減って体内での酸素運搬に問題が起きている状態です。
ヘモグロビンは赤血球の主成分(赤い色素)で、鉄を含む「ヘム」とたんぱく質である「グロビン」が結合したもので、肺で酸素を取り込んで、全身に運んでいますが、ここに問題が起きるということは全身で酸欠が起きているということです。
日本人の貧血の原因のおよそ30~50%は鉄の不足です。特に中高生の女子では鉄不足が深刻です。成長期である中学生女子では必要量で10mg/日、推奨量では14mg/日という基準が出ています。
気を付けて食べていても満たすことは、なかなか難しい量です。
体内の鉄分が不足するとヘモグロビンの量が減り、全身に運べる酸素の量も少なくなります、特に脳への酸素が不足するとめまいなどの貧血の症状が現れるのです。
鉄不足には日頃の食事の改善が基本ですが、通常食事だけで1日に10mgの鉄を摂ろうと思うとかなり気を使う必要があります。
食品からの鉄の摂取ですが、食品に含まれる鉄には2種類あります。
・肉や魚介類、卵黄に含まれる『ヘム鉄』
・野菜や穀類に含まれる『非ヘム鉄』
吸収率は『ヘム鉄』:『非ヘム鉄』は5:1くらいです。
『非ヘム鉄』を摂取するときは動物性食品やビタミンCと一緒にとると吸収率がアップしますのでバランスの良い食事をすることが大切です。
食べ合わせるときに以下のことに気を付けると良いと思います。
たんぱく質・ビタミンC・カルシウム・・・鉄の吸収に役立つ
ビタミンB12、葉酸・・・造血を助ける
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