左腕で赤ちゃんを抱くと右足にピリピリとしたシビレを感じる、それも結構強く。
右手で抱っこしてもシビレは感じないと言います。
もともと腰痛がありましたが右足のシビレは一週間ほど前からという事でした。
シビレには先ず感覚系検査。
痛覚・・・亢進、低下もしくは消失の異常はありません。
シビレの場合、痛覚検査は必須です。
通常シビレは痛覚が亢進もしくは弱く発火するとシビレと感じます。
しかし患者さんは痛覚神経が低下もしくは消失してもシビレと表現します。
歯医者さんで抜歯の時、麻酔を打ちますよね。
痛みの神経が麻痺します。しかし触った感じは解ります。
痛覚が麻痺して触覚は問題ない状態になります。
この状態でも患者さんはシビレと表現することがあります。
シビレと表現しても痛覚が亢進した状態と低下もしくは麻痺では正反対の状態にあります。
シビレの鑑別ではここが大きなポイントです。
この患者さんの場合、痛覚および他の感覚には問題はありませんでした。
上下肢の筋の伸張反射
異常なし
関節位知覚
異常なし
小脳検査
左側に若干の低下
対光反射、輻輳検査
右中脳に低下傾向はみられるが大きな差はありません。
筋力検査
下肢、上肢正常値。
しかし左大胸筋、特に大胸筋下部の筋力検査を行うと右足に違和感を訴えます。
何だ、これは?
左大胸筋と右下肢の関連性はどこにある?
いろいろ考えても何も浮かんできません。
こういう時は右足に違和感の出る状態を再現し、とにかく検査!!!
左大胸筋の筋力検査を行いながら
痛覚、感覚系・・・変化なし。
小脳系・・・変化なし。
対光反射
左変化なし
右・・・あれ?・・・
右大胸筋検査の直後、右瞳孔の縮瞳が弱い。
通常、左側鼻側網膜に光を当てると右瞳孔は縮瞳しなければなりません。
これは右中脳が正常に機能せず副交感神経低下もしくは交感神経亢進を意味します。
それに左大胸筋に負荷をかけない時には左右の瞳孔の大きさは同じでしたが、左大胸筋に負荷をかけた後は右瞳孔が散大します。
『犯人見っけ!』
右側交感神経の抑制低下が原因のようです。
腰痛も右大脳皮質の低下が関係しています。
大脳皮質は同側の脳幹網様体を活性化しています。
活性化された脳幹網様体は同側の中間外側細胞柱(IML)を抑制して交感神経をコントロールしています。
IMLは胸髄核(クラーク氏核)がT8~L2レベルを柱のように貫く神経の集まりで交感神経の中枢です。
大脳の機能が低下すると同側の脳幹網様体を活性化できません。
網様体の機能低下はIML抑制低下となり同側の交感神経過緊張を招くことになります。
この患者さんの場合は8キロの赤ちゃんを左手でずっと抱っこして左大胸筋、上肢筋の緊張状態が続いたことで右大脳皮質の低下を招き右側、特に下肢の交感神経が亢進。
立位で赤ちゃんを抱っこすると体幹を安定させるために反射的に下肢の筋肉は緊張します。
下肢の筋肉が緊張すると血流が生じます。
この時仙骨部の交感神経節が発火して血流を促します。
交感神経亢進状態では交感神経節が発火しやすい状態にあり
少しの刺激でも交感神経線維が発火してしまいます。
この状態では交感神経の節後線維であるC線維を刺激して右下肢にシビレを感じたのだと思います。
右足には問題ありませんので調整はせず
閉眼で頭部を左回旋させ左水平半規管を刺激。
右も縮瞳は正常に戻り左大胸筋の筋力検査を行っても右足の違和感はなくなしました。
この状態で様子を見ていただくことで施術は終了です。
その状態は何が招いているのか・・・
推理ゲームのようですね。
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