『痛み』
いやですね。
日々の臨床の中で一番多い訴えが痛みに対することです。
「この痛みをなくしてほしい」
「この痛みさえなければ」
それでは痛みとは必要のないものなのでしょうか。
痛みを感じない『先天性無痛無汗症』
染色体異常による遺伝性感覚・自律神経ニューロパチーに属する難病。
全身の温痛覚の低下もしくは消失、無発汗。
痛みを伝える神経線維の1つにC線維があります。
自律神経の節後線維もC線です。
発汗はアセチルコリンに反応しての交感神経反射です。
身体に痛みが加わると汗が出たり血管が収縮して血圧が上昇したりする。
これは交感神経の働きによる反射です。
節後線維の長い交感神経が作動できず汗をかくことができない。
痛みを感ずることができないので自分で舌や唇などを噛んでも気が付かない。
外傷や骨折、火傷を負っても気が付かない。
など痛みを感知できないという事は大変なことだと思います。
『痛み』の意味とは?
痛みは警告信号である!と言われます。
実際、先天性無痛無汗症のように痛みが感知できないために怪我をしたことに気が付けない。
これでは生命の危険すら招きます。
痛みは「警告」のほかに「活性化」の役割があります。
何かの事情で寝たきりになってしまい身体を動かすことができず刺激が低下する。
この状態が長く続くと身体のあちらこちらが痛くなってきます。
辛いですよね。
しかしこの痛みは、寝たきりなどで身体が動かせないだけでなく、重力と言う最大の刺激が低下することで神経機能が低下してしまいます。
このような時に神経系は自分を生存させるための最終手段が痛みを使って刺激する『自己活性化』です。
『痛み』が発生しているからには必ず理由、原因があるはずです。
怪我(打撲や外傷、骨折など)の場合は、痛みの原因がはっきりしていますのでその部分的な処置が必要ですが外傷を伴わない痛みは辛いからと言って薬やブロック注射などで痛みだけを止めても他の箇所への痛みや不具合として現れます。
これこそまさに身体からの警告信号。
身体の異常を痛みと言う手段で知らせています。
例
2週間ほど前より右肩を上げると痛みが出る(左腕は痛み無)。
しかし椅子に腰かけて右腕をあげると痛みはない。
一カ月ほど前より「めまい」で病院を受診。
メニエール病と診断されて処方された薬を服用しているがあまり改善はしていません。
足関節の可動域検査で右足関節の内反可動域低下があり
右肩と関連させて反射テストを行うと反応。
半年ほど前に右足首を捻挫。
痛みは1週間ほどで無くなったので気にしていなかったとのことです。
問診の時も右足首に痛みがないので捻挫したこと自体忘れていたという事で
捻挫を探り当てるまでに苦労しました。
「めまい」も同時に消失しました。
メニエール病が原因ではなく右足関節の固有感覚の入力が低下
前庭系に影響を及ぼしめまいを招いていた結果でした。
この患者さんの場合、右肩の痛みを通して身体のシステムに機能問題が生じていると身体が警告信号を発していました。
痛みの発生している箇所だけに囚われていると本来の原因が分からなくなってしまいます。
痛みをごまかすのではなく、痛みの意味を考えるべきではないでしょうか。
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