20代 女性 保育士
2か月ほど前から左かかとに痛みを感じ始める
子供たちと一緒に走る、ジャンプをするなどの運動時にだんだんと痛みが強くなりほとんど運動ができない状態に
現在では靴を履いた時、かかと付近に靴の縁が触れているだけで痛く、かかとのないスリッパなどを履いているということです。
1っか月前に病院にて受診、診断は「アキレス腱炎」
湿布薬とかかとの衝撃を和らげる中敷きを処方され「なるべく痛みの発生しているかかとに負担のかからないようにしてください」と言われました。
それから1っか月が経過した現在、痛みは強くなり、歩行時にかかとをつくことも困難になり来院。
≫現状での観察
左かかと付近を押すと痛み(圧痛)
左かかとに体重をかけると痛み
アキレス腱炎は、ふくらはぎの筋肉である腓腹筋とヒラメ筋の腱がアキレス腱となり、かかとの骨である踵骨の付着付近で炎症を生じることで痛みを発生します。
スポーツ選手などにも多く見られる疾患です。
検査を行ったところ腓腹筋、ヒラメ筋の機能に問題はありません。
ではなぜ痛みを発生しているのか?
人間には痛みの感覚を抑制(緩和)する神経システムがいくつか備わっています。
この患者さんの場合、下行性疼痛抑制と言う中枢神経から末梢神経への調整システムが破綻し、かかとの痛みを発生させていました
中枢神経(大脳皮質)のエラーを修正するための皮膚からの弱い刺激を入力し下行性疼痛抑制システムの回復を図ります。
3回目の調整時にはほとんど痛みが消え保育の仕事も支障なくできるようになりました。
≫専門的な解説
筋力検査では左足全体の筋肉に力が入らない状態(その他の両手、右足などの筋トーンは正常)
左下腿三頭筋(腓腹筋。ヒラメ筋)の筋の伸張反射左亢進。
対光反射左、散大状態(神経異常興奮状態などの兆候はない)
ウェーバー検査(聴覚路検査)、左側頭葉低下兆候
近見反射左低下
これらの検査を総合して判断すると左大脳皮質の機能低下による同側(左側)の下行性疼痛抑制機能低下でかかとからの侵害刺激信号が増幅され痛みと認識された可能性が高い。
大脳皮質からの下行性調整経路のもう一つも役割として、筋のトーン(張り)の調整、この調整機能が低下することで下腿三頭筋の筋の伸張反射の亢進を引き起こしていた。
アキレス腱炎はあくまでも急性痛であり、この患者さんの場合、1っか月を経過して病院を受診している時点で慢性痛に移行していたと考えられます。
しかし「本当に炎症を起こしていたのか?」と言うことが問題だと思います。
今となってはそれを確認することは困難です。
これはあくまでも私見ですが、痛みが発生した当初から「炎症」ではなく、中枢の機能低下による下行性疼痛抑制システムの問題ではなかったのかと思われます。
「気が付いたら痛くなっていた」「いつの間にか痛くなっていた」など原因が見当たらない痛みのほとんどは中枢神経の機能低下によるところが大きいと思われます。
通称「ぎっくり腰」と言われる急性腰痛も中枢神経系の機能システムの問題です。
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