眩暈(めまい)は文字通り眼が眩むように自分や景色がグルグルと回ったりグラグラと揺れてしまう、浮遊感は自分がフワフワとして、まるで雲の上にでもいるように安定しない。
めまいも浮遊感も大変に辛い。
しかしめまいと浮遊感、この双方は似て非なるもので原因がまるで異なります。

回転性と非回転性のめまい

回転性めまいとは、周りの景色や天井がグルグル回る、もしくは自分がグルグル回っているような感じの、めまいです。
この回転性めまいは眼振と言う瞳の微細な振えで発生します。
非回転性めまいは、自分がフワフワするような感じがあり別名、浮遊めまいと言われます。

めまいと混同されやすいのが、貧血や立眩みの「ふらつき」です。これは脳幹が虚血状態になることにより起こる現象で、めまいとは発生のメカニズムが異なります。

めまいは、小脳、半規管、前庭神経核のいずれか、もしくはすべての機能低下が原因として関わっています。一つ一つの機能を調べ、原因を取り除かなければ改善しません。

めまいは吐き気(嘔気)を伴うことが多くあります。
これは、何らかの原因で左右の小脳に機能差が生じ、これにより嘔吐中枢である孤束核が刺激され嘔気が引き起こされます。
咽喉の奥に指入れると吐き気を起こします、これを催吐反射(さいとはんしゃ)と言いますがこれは、喉の奥の刺激が孤束核に入力されて起こる反射反応です。

高齢者のフワフワするような浮遊性めまい、突発ピーク性頭痛を伴うめまいは脳血管障害を伴っている場合があり危険ですので注意が必要です。

平衡バランス

立つ、座る、歩く、走る、運動などを私たちは簡単に行っていますがこれ等の動作は平衡バランスが取れていないと出来ません。
このバランスを取るという作業は体中の神経センサーが調整、調和し合い行われる大変複雑で難しい作業です。

私たちの体に一番大きな影響を与えているのは重力です、重力への作用の一つが平衡バランス。
坂道や斜めな所に立っても何の意識をしなくても体を真っ直ぐ立たせバランスを取ることが出来ます。
平衡バランスの基準は重力の作用に対して視線を平行に保つということです。
平衡バランスを保つには耳の奥にある水平半規管・前半器官・後半器官を会わせた三半規管が頭の傾きを感知して左右の眼を水平にします。

視線を平衡に保つこととめまいの関係

① 三半規管は頭部の水平・前方・後方の傾きを感知し小脳と前庭神経核に連絡し情報を送ります。
② 関節や筋肉などからの情報が小脳へ入力され身体運動をコントロール
③ 前庭神経核は各半規管からの情報により対象物に対して眼球の方向を  一定に保つ反射機能で眼球の   動きをコントロールします。
これらの神経系の働きで、乗り物で揺れても外の景色は揺れることなく安定して見えます。
この眼の働きを前庭動眼反射と言います。

おもしろい実験をやってみましょう。
目の前に人差し指を立て、頭を固定して目の前の指を左右に振ると、すぐに何本にも見えてしまいます。
今度は指を面前で固定して、頭部を左右に動かして見てください。
最初はゆっくり、だんだんお速く頭を左右に動かしても指はぶれることなく一本のまま見えています。
(あまり速く頭を動かし続けるとクラクラしますのでご注意ください)

固定している物に対し頭や体が動いたり揺れたりしても目はすばやく変化に対応できます。
反対に周りの景色が揺れたり動いたりした時には目は対応できません。
乗り物酔いは前庭動眼反射機能が低下して起こります。

小脳・三半規管・前庭神経核
小脳・三半規管・前庭神経核の図

以上の 小脳・三半規管・前庭神経核からの頭の位置、身体の筋肉の状態、関節の位置などの情報が大脳に伝えられた視覚情報と統合され、視線が平行に保たれます。

小脳について少し

小脳は後頭部の辺りにあり、大脳の下、脳幹(中脳・橋・延髄)の背部におんぶしたようにくっ付いています

小脳の図
小脳

上の図は小脳の各部分を表した図です。

虫部

中央部に位置する虫部は別名脊髄小脳と言われています。
虫部には体幹のバランスや手足の動き、姿勢の情報が入力されます。
ちなみに虫に似ているので名づけられたと言われています。
虫部が問題を起こすとフワフワとした浮遊感や真っ直ぐ歩けないなどの症状が現れます。

半球

虫部の両側の部分を半球と言い、別名大脳小脳と言われています。
半球部分位は主に指の動きの情報が入力されコントロールされます。
半球部には大脳皮質からの入力もあります。実はこの経路はイメージトレーニングの時に働く経路です。
この半球部がうまく働かないと指の動きがぎこちなくなったり運動失調になったりします。
またスポーツなどの運動の上達にも関係しています。
一旦、自転車を乗れるようになれば、長い間乗っていなくても乗り方は忘れません。これは半球部の働きのおかげなんです。

片葉小節葉

一番下にある細長い形をしたのが片葉小節葉です。
実は片葉小節葉は首脳の内側に隠れていています。
別名を前庭小脳と言います。
前の庭とは面白いネーミングですが、この部分には頭がどう動いたのかと言う情報が入力されます。
頭の動き、傾きは左右の耳の奥にある3つの半規管、つまり三半規管の働きと目の動きの情報が片葉小節葉に伝えられます。

小脳が調子を崩すと?

小脳が問題を起こすと、運動機能が低下し体の動き、目の動きがスムーズにいかなくなり浮遊感やめまいを起こしやすくなります。
平衡バランスを保つのも小脳の働きです。
平衡バランスが崩れることでも起こるのが『めまい』です。
めまいは眼振という眼球の微細な振動により引き起こされます。
眼球運動は小脳によりコントロールされています。
小脳は手足や身体の動きや働きをコントロールしています。
小脳の機能が低下すると眼球運動をコントロールする事が出来なくなり『めまい』を誘発します。
また、関節や筋肉からの刺激入力が低下すると小脳が機能低下しやすくなるため『めまい』『ふらつき』が誘発されます、高齢者の転倒・めまい・ふらつきの多くは関節や筋肉の動きが悪くなることで小脳への刺激が低下した結果です。

めまいや乗り物酔いで気持ちが悪くなったり吐きそうになったりしたことはありませんか?

脳幹に孤束核と言う神経核があります。
少し難しくなりますが、もう少しお付き合いください。
孤束核は吐き気の神経中枢です。
小脳と孤束核とは密接な関係にあります。小脳に問題があり機能低下すると嘔吐中枢である孤束核が刺激され吐き気(嘔吐)症状になります。
めまいや乗り物酔いになると気持ち悪くなり吐き気をもよおすのはこのためです。更にこの状態が続くと孤束核は副交感神経の中枢でもあるため副交感神経亢進状態になり下痢や疲労感を招きます。

飲酒運転の取り締まりは小脳の神経検査?

飲酒運転の取締りでお巡りさんにやらされる色々な動作、真っ直ぐ歩く・片足で立つ・ちゃんと喋る事ができるか、ロレツが回っているか等々、これは全て小脳の神経機能検査です。
アルコールは小脳の機能を低下させる作用があります。
お酒を飲んで酔っ払うとテーブルの上のコップを倒してしまう。声が大きくなる。真っ直ぐ歩けない真っ直ぐ歩けない(千鳥足)。座っていて倒れる。吐いてしまう。
など等々、お酒で小脳の働きが低下した結果の状態です。

小脳がもたらす思わぬ症状!

小脳や三半規管が機能低下すると腰痛や肩こりを招くことがあります。
三半規管は体の傾きを感知する受容器である為、例えば右の前半規管が低下を起こし実際には体は真っ直ぐに立っているのに右斜め前方へ傾いていると誤った情報が脳に伝達されると体を真っ直ぐにしようと反対側の筋肉を収縮させます、三半規管が機能低下を起こしている間は間違った体の傾き情報が脳に入力される続けるため筋肉は軽度な収縮を続けコリやスパズムを起こし、痛みを引き起こす結果になります。

寝違えて首が動かない時など、後を向こうとして上半身全体で振り向くとバランスを崩すときがあります
眼球を動かす外眼筋と首の筋肉の動きは反射運動で連動しています。目が右を見ると顔も反射的に右を向きます。
試しにゆっくりと顔を左に向けながら目は右を見てください、ぎこちない動きになってしまいスムーズに顔と目を同時に動かすことが出来ません。
外眼筋と首の筋肉の反射運動により正しい情報が脳に入力されバランスが保たれます。

全身の筋肉、関節の働き、そして三半規管、小脳、前庭神経核、中枢神経など多くの問題がめまいを引き起こします。

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